半泣きの詩(うた)R 

「半」のつく言葉が好きだ。半泣き、半笑い、半ケツ、半身、半熟、半殺し等々。 どれもこれも中途半端な状態を表していてコミカルだ。 半殺しなんかはちょっと物騒な響きだが、それでもきっちり殺されるよりはマシである。 世界は中途半端であふれ返っている。 このブログでは大泣きするほどのことではない、でも半泣きくらいにはなってしまいそうな日常のシーンを掠めとって、読んでくれる人を半笑いにしたいと思います。

出会いは大切というけれど・・・


その夜、僕は同僚のSやんを連れ出した。

目指すは、祇園のピンクサロン『ミルキーウェイ』だ。

プライベートでちょっとやなことがあり、ここのところ沈みがちなSやんに、元気を出してもらおうという

僕の親切心、男気がそうさせたのだ。決しておのが性欲処理のためではない。男として、元気がない友を

放っておくことはできなかったのだ。だから決して自分の欲望のためでは・・・もうええな。

ともかく、あまり気が乗らない感じのSやんを無理やり引っ張っていった。


入口で慇懃に迎えてくれたボーイさんに、僕は格好をつけて言った。

「僕はかずみちゃんね。うん、指名で。こっちは初めてなんで、可愛い娘たのむよ」

僕は隣でちっちゃくなっているSやんの大きな肩をぺしぺしと叩いた。身長185cmの偉丈夫のSやんだが、

こういうお店でどうふるまっていいか分らない様子だった。

アパレル会社でデザイナー兼営業をしていたという経歴のスマートな男なので、てっきり慣れているものだと思っていたのだが、

ハートは純情なようだった。

「かしこまりました。どうぞ」

待ち時間はなく、すぐに入店することができた。

客と女の子が自然に密着して話せるように、店内には歌謡曲が大音量で流れている。そしてそれと

同調するようにMCのおっさんが

“ハイ!ハイ!ハイ!ハイ! 本日はご来店まことにありがとうございます! どうぞ心行くまで楽しんでいって
ください! 麗子ちゃん、3番テーブル、3番テーブルご指名です”

などと、マイクパフォーマンスをして、ただれた雰囲気を盛り上げるのだ。

僕たちは壁際中ほどのボックス席に案内された。

小さなテーブルをはさんでSやんと向かい合って座っていると、間もなく女の子が来た。

僕には指名ですでに馴染みのかずみちゃんがつき、Sやんには田中美奈子似(古っ)で、スタイル抜群の

真琴ちゃんがついた。Sやんは明らかに嬉しそうだった。

楽しく飲み始めた。だけど、5分もしないうちに、かずみちゃんが席を離れることになった。

今や人気者になってしまったかずみちゃんはあちこちで指名がかかるのだ。

かずみちゃんの入店当初から指名している僕としては、嬉しいような悲しいような、なんとも複雑な心境だった。

そして何より気がかりなのは『ヘルプ』にどんな娘が来るかということだった。

『ヘルプ』とは人気ピンサロ嬢の空きを埋めることをいうのだが、入店間もない娘かヘルプしかできない、つまり指名が

かからない不美人な娘が来ることが多いのだ。

果たして悪い予感は当たった。僕についたヘルプは元横綱の朝青龍みたいな娘だった。いや、もしかしたら朝青龍の

方が可愛いかなと思ってしまうくらい、横綱級の不美人だった。

僕のテンションはえぐるように下がった。

「なあなあ、お客さんいくつ?」

不美人な上にタメ口なドルゴルスレンギーン・ダグワドルジ(朝青龍)。僕もつい投げやりになってしまう。

「いくつでもええ」

「仕事はなにしるの?」

「占い師」

「うそ!?」

「うそ」

「本当はなに?」

「ミミズの養殖」

「え!?本当?」

「うそ」

てな、具合。会話の最中も、視線はずっとかずみちゃんを追っていた。

僕のあまりにぞんざいな態度をお店が察したのか、また別のヘルプが来た。

しかし、今度もいただけない。いやビジュアル的には朝青龍以上だ。薬師寺と戦った後の辰吉丈一郎みたいな顔なのだ。

傷んだ茶髪はとうもろこしのひげみたいだし、ラリった雰囲気で前歯もない。太腿にある牡丹のタトゥーがイカツイことこの

上ない。

“なにがヘルプだ。助けて欲しいのはこっちの方だ”

僕の心の叫びなど誰にも届かない。

辰吉は前歯がないせいか、もはや何を言っているのかよくわからない。僕は辰吉を無視した。

で、無視しているとヒマなので、向かいのSやんと真琴ちゃんに

「王様ゲームしよう!」

と呼びかけたのだが、2人は仲良く笑って

「いや!」

と、断りやがった。にも関わらず、辰吉が横から

「あろ、あろ(やろう やろう)」

と、首を突っ込んできたので、僕はそのとうもろこし頭に思わずパチキ(頭突き)をかましてしまった。

僕の渾身の一撃で完全にKOされた辰吉は席を後にした。

しばらく僕は一人で飲んだ。なぜか、ほっとした。

目の前で、真琴ちゃんの乳のひとつも揉まないSやんに、じれったさを感じていると次のヘルプが来た。

今度はジャイアンのおかんみたいな娘だったが、辰吉の相手をしたあとだったので、ちょっと可愛いく思えた

自分が情けなかった。

40分コースの終わりかけに、またちょこっとだけかずみちゃんが僕のところに来た。

かずみちゃんは僕に乳を揉ませ、チューをしながら

「ごめんね。うふっ」

とキュートな笑顔を見せた。

店内には尾崎豊の『シェリー』が流れていた。

♪ シェリー 俺は転がり続けてこんなとこにたどりついた~ ♪

僕はこんなところで、いったいなにをしているんだろう。尾崎の歌詞が胸に沁みた。


店を出て「今日は最悪やった」と一人こぼす僕の横で、Sやんが、彼方できらめく星を見ながらつぶやいた。

「真琴ちゃん、可愛かった…」


数日後、Sやんから

「なあ、シマ。真琴ちゃんにティファニーのオープンハートが欲しいって言われてるんやけどどうしようなかなあ」

と相談された。

「あかん。そんなん買ったらあかんで」

必死に止めたのは言うまでもない。

エッチなお店では不美人がついてもコワイ。可愛い娘がついてもコワイ。

出会いは大切だというけれど、それも時と場合によるのではないだろうか。


ちなみにかずみちゃんは、その後ヘルス嬢に転身。さらに発奮しナンバー1に昇りつめた。

風俗雑誌に特集記事を組まれたかずみちゃんは「新車でベンツを買った」と嬉しそうにピースサインをしていた。

「そのベンツのハンドル代くらいは、僕のお金かな」と、セコイことを思ってしまった。恥ずっ。

    




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