半泣きの詩(うた)R 

「半」のつく言葉が好きだ。半泣き、半笑い、半ケツ、半身、半熟、半殺し等々。 どれもこれも中途半端な状態を表していてコミカルだ。 半殺しなんかはちょっと物騒な響きだが、それでもきっちり殺されるよりはマシである。 世界は中途半端であふれ返っている。 このブログでは大泣きするほどのことではない、でも半泣きくらいにはなってしまいそうな日常のシーンを掠めとって、読んでくれる人を半笑いにしたいと思います。

トレッドミル心機能検査


 ときどき、心臓が針で突いたように痛くなるので病院で検査をしてもらった。

「トレッドミル」というランニングマシーンのような機器を使っての検査だった。

 
 Tシャツと短パンに着替えると、体に赤や黄色の線をつけられた。

 それらの線は腰に巻きつけられた小さな弁当箱ほどの物体につながっている。

 この弁当箱からメインのコンピューターに心拍数や脈拍が送信される仕組みになっているらしい。


 出来損ないの人造人間のような格好でトレッドミルに乗った。

「この検査は、あらかじめ目標の心拍数を設定した上で運動してもらいます。心拍数が目標の数値に達するまで
 心臓に負荷をかけます。スポーツをされているそうなので、ステージ・2からいきます」

 30過ぎの愛想は良いが、あまり美人ではない看護士が言った。

「はい。わかりました」

 ちょっと嫌な予感がした。

 ステージ・2とか3というのは、つまりトレッドミルのスピードを表すもので、数値が大きいほど速度は速い。

 スポーツをしていると言っても、以前通っていたキックボクシングの道場に、月に一度ほど顔を出して、軽く体を

 動かしているだけなのだ。

 にも関わらず、検査前の病歴やスポーツ歴なんかを書く用紙に

 『いまもキックボクシングをしています』

 などと記入してしまったのだ。

 あまり美人でないとはいえ、愛想の良い看護士さんに、『いいかっこ』してみたかったのだ。

 男って、いや、僕ってあほだ。


「はい。では、はじめます」

 愛想は良いがあまり美人ではない看護士がスイッチを入れた。

 すぐ横にいる梶原ドクターが静かにうなずいた。梶原ドクターは色の白い七・三分けのまじめそうな医師だ。

 ステージ・2は楽勝だった。

 普通に歩くより少し速い程度のスピードだった。

 2分ほど経つとステージは3に上げられた。

 ステージ・3は小走り程度のスピードだった。

 梶原ドクターがメインコンピュータを見ている。

 検査前の先生の話では、心臓に異常がある人やお年寄りの場合は、ステージ・3で、たいてい目標の

 心拍数に達するのだそうだが、 僕の心臓はまだそんなに心拍数は上がらないらしい。

「あと、10秒でステージ・4に上げます」

 あまり美人でない看護士が言った。

 ステージ・4はまあまあのダッシュをしなければならないくらいのスピードだった。

 30秒くらいで少し息が乱れてきた。汗も出てきた。

 横にいる梶原ドクターを見た。半笑いだ。美人ではない看護士も半笑いだ。

 その笑みの意味は

「お前、ふつうのやつより心臓強いやないか」

 ということなのだろう。

 さらに15秒ほどすると、不美人の看護士が

「ステージ・5に上げます」

 と言った。ほとんど全笑いで。

 ステージ・5はシャレにならなかった。猛ダッシュだ。

 僕はドタドタと音を立てながらマシンの上を走った。

 ぶさいくな看護士が

「大丈夫ですか?」

 と、訊いてきた。完璧な全笑いで。

「ちょ、ちょっとしんどいです……」
 
 僕は汗を飛び散らせながら答えた。

“これ以上続けたら、ほんまに心臓悪くなるで!!”

 というくらいダッシュしたところで、やっと検査は終わった。

 数日後に検査結果が出ると言われたが、正常に決まっている。

 もう、いや。ほんとに疲れた。
 
 




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