半泣きの詩(うた)R 

「半」のつく言葉が好きだ。半泣き、半笑い、半ケツ、半身、半熟、半殺し等々。 どれもこれも中途半端な状態を表していてコミカルだ。 半殺しなんかはちょっと物騒な響きだが、それでもきっちり殺されるよりはマシである。 世界は中途半端であふれ返っている。 このブログでは大泣きするほどのことではない、でも半泣きくらいにはなってしまいそうな日常のシーンを掠めとって、読んでくれる人を半笑いにしたいと思います。

憲ちゃんのおばあちゃん。

 若かりし頃、居酒屋でアルバイトをしていた。

 ある日、同僚の市村憲一くんが出勤時間になっても店に来なかった。

 マスターに言われて、僕は憲ちゃんの家に電話を入れた。
 (携帯電話など、六本木ヒルズ族でさえ持っていない頃の話だ)

 電話に出たのは、憲ちゃんのおばあちゃんだった。

「こんばんわ。居酒屋○○の島中と申しまずが、憲一くん、いらっしゃいますか?」

「はあ。ちょっと待っておくれやっしゃ」

「はい」

 僕はマスターのご機嫌を気にしながら、受話器を握りしめた。

 十数秒後、受話器から憲ちゃんのおばあちゃんの声が聞こえてきた。

「憲ちゃん、電話やで。島中さんやて。居酒屋さんの人みたいやで。起きなさい。早よ起き! 電話やって言うてるやろ。
 あ~、もう」
 
 保留ボタンを押していなかったのだろう、おばあの声は丸聞こえだった。

 寝てたのか。そりゃ、まずいなあ。

 僕はマスターになんと報告しようか思案した。

 んが、僕のそんな思いをよそにおばあは

「すんまへん。憲ちゃん、いま出かけてます」
 
 と、言い放ったのだ。

 びっくりした。

 とっさの機転だったのだろうが、そこに頭使うなら、とりあえず保留ボタンを押してね。

 でも、嫌いじゃないよ、そんなおばあちゃん。

  




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