半泣きの詩(うた)R 

「半」のつく言葉が好きだ。半泣き、半笑い、半ケツ、半身、半熟、半殺し等々。 どれもこれも中途半端な状態を表していてコミカルだ。 半殺しなんかはちょっと物騒な響きだが、それでもきっちり殺されるよりはマシである。 世界は中途半端であふれ返っている。 このブログでは大泣きするほどのことではない、でも半泣きくらいにはなってしまいそうな日常のシーンを掠めとって、読んでくれる人を半笑いにしたいと思います。

運動会のとき「もしも隔世遺伝だったらどうしよう」と心配した甥っ子が……


 十五年前の今ごろだ。甥っ子、吉行の運動会に行った。

 当時、吉行は3歳で保育園に通っていた。僕は新婚ホヤホヤでまだ子供はいなかった。

 運動会デビューに臨む吉行は可愛くってしかたがなかった。そうだ、僕は親バカならぬ、おじバカだったのだ。

 写真も5、60枚は撮った。

 お遊戯の最中に僕を見つけ、にこっと笑いながら手を振る吉行はアホ面ではあったけど、天使のようだった。

 そんな小さな幸せを噛みしめる僕に、隣にいた僕の弟、つまり吉行の父親が不意にあることを打ち明けた。

「あのな兄貴。吉行な、隔世遺伝やと思うんやけど。たぶん俺らのおかんのを受け継いだんやと思うんやけど……」

「なんや!?」

 もったいつけるような弟の物言いに、僕は焦れた。

「吉行、歯みがきよらへん」

 弟が小石を指で弾いた。

 なにを深刻ぶってやがる。隔世遺伝などというから、どんな重大事かと思えば、そんなことか。

「おまえ、それは遺伝違うやろ。生活習慣の問題やないか。確かに俺らのおかんはめったに歯みがきよらんけど」

「それだけやないんや」

 ほっとしたのもつかの間、弟は更に心配事があると言う。僕は黙って弟の言葉を待った。

「吉行、ちょっと……心持やけど歯ぐき出てるんや。将来、もっと出てくるんちゃうやろかって不安やわ、俺……」

 弟はまた小石を指で弾いた。

「そうか……」

 中学校の卒業式に出ることを許されなかったくらいには不良だった弟が不安になるのも無理はない。

 ここへきてようやく僕は弟の暗澹たる胸の内を理解した。

 歯磨きはなんとでもなるとして、歯ぐきは問題だ。
 
 僕たちのおかんは、途方に暮れそうなほど歯ぐきが出ているのだった。

 もし、吉行があんな歯ぐきになったら……

「大丈夫や」

 僕は自らの不安を打ち消すように弟に言った。


 あれから15年が経った。鼻たれ小僧だった吉行は大学生になった。

 幸いにも歯ぐきは人並みで、そこそこの男前でさえある。そればかりか、職場での人物評が「チャラい」ということに対して

不満を覚える僕に

「おっちゃん、評価は他者がするもんやで。だから受け入れなあかんで」

 などと言うくらいに成長した。よかった。

 





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