半泣きの詩(うた)R 

「半」のつく言葉が好きだ。半泣き、半笑い、半ケツ、半身、半熟、半殺し等々。 どれもこれも中途半端な状態を表していてコミカルだ。 半殺しなんかはちょっと物騒な響きだが、それでもきっちり殺されるよりはマシである。 世界は中途半端であふれ返っている。 このブログでは大泣きするほどのことではない、でも半泣きくらいにはなってしまいそうな日常のシーンを掠めとって、読んでくれる人を半笑いにしたいと思います。

海で女性がトイレ(小さい方)に行かない理由をあほな先輩が教えてくれた。

『おい。お前、海で女がトイレに行ってるの見たことあるけ?』

テーブルの向かいで抹茶パフェを頬張るE先輩が訊く。

『え?』

質問の意味がイマイチ分からない。

『だからやな。みんなで海に行ったとき、ビーチで、私、トイレに行ってくるって言って、オシッコに行く女を見たことあるかって訊いてるんや』


E先輩が白玉をすぽんと音を立てて、口に入れた。


『そういえばないかも。まぁ、オレはあんまり海に行かへんけど』

どうでもいいことに思えた僕は適当に返事をし、半分炭酸の抜けたコーラに口をつけた。

『オレは毎年、2、3回海に行くんやけど、今まで1回もないんや。ただの1回もやぞ。あれは絶対海の中でしとる。絶対や』


抹茶パフェを食べ終えた先輩が、ドヤ顔を僕にぐいっと近づけた。

僕には盆休みがないのだが、この間の水曜日が急に休みになった。

実はのっぴきならない用事がいくつか重なっていて、僕はいまちょっと大変な状況なのだ。だから不意に得た休みを使って、1つでも片づけようと思っていたら、E先輩から呼び出されたのだ。


E先輩はこういうタイミングを突いてくるのが、昔からなぜか得意だ。


先輩の誘いを無下に断ることもできず、近所の喫茶店に行ったのだ。

どうせ大した用事ではないだろうと思っていたが、予想通りだった。


『どうでもええわ、その話』

『お前、先輩に向かってその態度はなんやねん』


自分のアホさが分かっているのだろう、E先輩が笑いながら突っかかってくる。


威厳を取り戻そうと思ったのか、アホのE先輩、次は自分が海の中でウンコをした話をした。


『男でな、海の中でウンコしたことあるって自慢しよる奴おるやろ。アレはだいたいウソや。オレはほんまにしたことあるけど、あれな浮きよるんや、ウンコが。みんなそこまで言わへんやろ。だからウソなんや』


僕はグラスの氷を頬張って席を立った。

『帰るわ。忙しいし』

『そうか。来年は一緒に海行こな』

『いや』

氷を噛み砕きながら答えた。


“夏は終わるのではない 夏は死ぬのだ”

と寺山修司が言った。

夏の代わりにE先輩が死ねばいいのにと、ちょっとだけ思った。





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