半泣きの詩(うた)R 

「半」のつく言葉が好きだ。半泣き、半笑い、半ケツ、半身、半熟、半殺し等々。 どれもこれも中途半端な状態を表していてコミカルだ。 半殺しなんかはちょっと物騒な響きだが、それでもきっちり殺されるよりはマシである。 世界は中途半端であふれ返っている。 このブログでは大泣きするほどのことではない、でも半泣きくらいにはなってしまいそうな日常のシーンを掠めとって、読んでくれる人を半笑いにしたいと思います。

めちゃくちゃ広い家


 もう十年以上前の話だ。友達のマサトが結婚した。

「おめでとうさん。ところで新居はどこなん?」

「実家の近く。借家やけど一戸建てや」

「そうか。ええなあ、一戸建てか」

「おう。9LDKや」

「うそっ!? 9LDKってお前、それめちゃくちゃ広いやなか。ほんまか?!」

「ほんまや。9LDKや」

 結婚式の二日前に電話をしたら、こんな会話になった。

「実家の近くってどの辺や?」

「蓮本町や。ミツオの家の近くや」

「蓮本町にそんなでかい家あるわけないやないか。うそつくな」

「うそ違うわ。そんなこと言うなら見に来いや」

 ということになったので翌日見に行った。するとなんのことはないマサトの新居は3LDKのちょっと広いめの家だった。

「お前、9LDKってどういうことか知ってる?」
 
 僕は聖母マリアのような優しい口調でマサトに訊いた。マリアと話したことはないが。

「9畳のリビングとダイニングキッチンやんけ」

 マサトが誇らしげに答えた。

 僕はブッダのような慈悲深い口調でほんとのところを説明してやった。ブッダと会ったことはないが。
 
 するとマサトは三秒くらい黙りこくった後、

「お前、このことは絶対だれにも言うなよ」

 と必死に訴えた。

 僕はガンジーのような情深い笑顔で何度もうなずいた。
 もちろんガンジーにも会ったことはないが、その笑顔はすぐに思い浮かべることができる。

 果たして次の日。披露宴で僕は友達はおろか知らない人にまでこのことを吹聴したのだった。

 





気まぐれ日記 ブログランキングへ

にほんブログ村 サラリーマン日記ブログへ
にほんブログ村

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する