半泣きの詩(うた)R 

「半」のつく言葉が好きだ。半泣き、半笑い、半ケツ、半身、半熟、半殺し等々。 どれもこれも中途半端な状態を表していてコミカルだ。 半殺しなんかはちょっと物騒な響きだが、それでもきっちり殺されるよりはマシである。 世界は中途半端であふれ返っている。 このブログでは大泣きするほどのことではない、でも半泣きくらいにはなってしまいそうな日常のシーンを掠めとって、読んでくれる人を半笑いにしたいと思います。

勇敢だけど弱いのか、弱いけど勇敢なのか・・・


中2の冬休みのある日。

僕は同級生5,6人と、卒業後、就職することになっていたY先輩と地元のゲームセンターにいた。

とりたててゲームが好きというわけではなかったが、なんとなく“つき合い”でそこにいた。

岡崎という同級生が『ゼビウス』というゲームで、今までに見たことのない隠れキャラクターを出したときだった。

同級生のSが黒いガラス扉を開けて、ゲーセンによれよれと入ってきた。

僕たちは、大袈裟な音を立てたガラス扉の方を一斉に見た。

「隣町の不良にカツアゲされた」

Sが目に涙を浮かべて言った。

僕たちは押し黙った。

隣町の不良といえば、三代前からの由緒正しき不良で、なんなら本職からスカウトがくるくらいのハイレベルな悪なのだ。

すぐにでも報復に行きたいのは山々なのだが、なにせ相手は悪辣極まる不良の純粋培養である。

中途半端な男儀はすなわち即、死を意味する。中2とはいえ、そういうことがわかっている僕たちはうつむくしかなかった。

「オレが取り返してきてやる」

そんな重い沈黙を破ったのは、中卒で就職をすることになっていたY先輩だった。

「隣町のどこや?」

Sからカツアゲの場所を訊き出したY先輩は、風のようにゲーセンから出て行った。

およそ1時間半後、Y先輩がゲーセンに戻ってきた。ひどく顔を腫らして。

「すまん、S。お前の金、取り返せへんかった。5人もいるとは思わんかった。先に言えよな、そういうことは」

無理して笑うY先輩を責めるやつは1人もいなかった。

「大丈夫ですか?」

遠慮がちに訊いた僕に、Y先輩が言った。

「おお。お札はちゃんと靴下に隠してたから、とられずに済んだわ」

おいおい、ハナから負ける気やったんかいな。

みんな思わず笑ってしまった。Sも笑い泣きのような顔をしていた。

そのあと、みんなで近所のスーパーの店先で売っているたこ焼きを食べに行った。

めちゃくちゃ熱くてうまかった。

中卒で就職したY先輩が、いまどこでなにをしているのかはわからない。でも、きっといまも無茶をして後輩とか家族

とかを守っているように思う。

                 最近は、ハナから負けると分かっている夫婦喧嘩はしない僕です。合掌。             




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