半泣きの詩(うた)R 

「半」のつく言葉が好きだ。半泣き、半笑い、半ケツ、半身、半熟、半殺し等々。 どれもこれも中途半端な状態を表していてコミカルだ。 半殺しなんかはちょっと物騒な響きだが、それでもきっちり殺されるよりはマシである。 世界は中途半端であふれ返っている。 このブログでは大泣きするほどのことではない、でも半泣きくらいにはなってしまいそうな日常のシーンを掠めとって、読んでくれる人を半笑いにしたいと思います。

『こんな場合、あなたならなんと答える?』 キックボクシングの師匠に関してのあれこれ

身長181㎝、体重75㎏、体脂肪率は10%、しなやか筋肉、涼しげな二重の目、坊主頭でありながらイケメンの格闘家。それが僕のキックボクシングの師匠・辻出謙二塾長(52歳)だ。
ご自身の格闘家としての実力もさることながら、指導者としてもプロキックボクサーを何人も育てるなど、まさに“全身格闘家”だ。書いていて自分でもよく意味がわからないが、とにかく凄い人なのである。

そんな凄い格闘家に、こんなことを訊かれたら、あなたならどう答える?

ある試合後の飲み会のときのことだ。
宴がはじまって、生ビールを何杯か飲んだ師匠が、突然、道場生に向かっておっしゃった。

「お前らオレのこと、ゆでダコやとか思ってるやろ」

師匠はお酒に弱いというわけではないが、飲むと顔が赤くなる。
坊主頭で顔が真っ赤。これはもう誰がどう見てもゆでダコだ。訊くまでもないことであるし、言うまでもないことである。
もし間違って厨房に入っていけば、板さんに刺身か唐揚げにされるだろう。
包丁一本で板さんが師匠に勝てるかどうかは、この際、置いておく。それくらい飲んで赤くなった師匠は、ゆでダコそのものということなのだ。

もちろん、師匠も冗談で訊かれたのだ。しかし、だからといって僕たち道場生が「はい。そうですね」と答えられるはずはない。誰だって命は惜しい。冗談に冗談で答えたら、冗談のつもりで繰り出した師匠の制裁パンチが致命傷になって死ぬ、という冗談にならない展開が容易に想像できるからだ。
このときは確か、現役ヘビー級ランカーの渡邉和さんあたりが、強引に話を変えて事なきを得たはずだ。
なにせ恐ろし過ぎたので、そのあたりの記憶が曖昧になっている。

蛮勇を振り絞り、酒席での師匠のお茶目っぷりを紹介したが、普段の師匠はとてもジェントルマンだ。
あれは師匠にちょっとした報告事があって、道場に併設されている整体院にお邪魔したときだ。
平日の昼間。約束の時間よりかなり早く着いてしまった僕は、待合スペースで待たせていただくことにした。
院内はヒーリング系のBGMが静かに流れているのだが、カーテン一枚隔てた施術台からは師匠とお客さんの声が聞こえてきた。

「いつごろ開店したんや?」「もっと下や」「おう。もっと強く揉んでくれ」

横柄な言葉遣いの男性客は、声の感じから30代と思われた。そのいちいちに師匠は丁寧に応えてらした。

と、

「ションベンや。便所はどこや?」

「はい。奥のドアの向こう側、中に進んでいただいた左手です」

という会話の数秒後、カーテンがぴしゃっと開き男性客が僕の目の前に現れた。えらそうな言葉遣いから、チンピラのような男を想像していたのだが、至って普通のサラリーマン風だった。
男性客は師匠の案内通り、奥のドアを開けてトイレに行ったが、数分後またそのドアを開けて戻ってきたときは、なにか様子が変わっていた。

「あのぉ。あちらはなんですか?」

おずおずといった感じで師匠に尋ねる男性客。

「あちらは道場になってます。キックボクシングと空手の道場です」

やはり丁寧な口調の師匠。

「誰が教えてはるんですか?」

「私がやらせてもらってます」

「そうなんですか」

男性の声は、か細くなっていた。
自分がさっきまでえらそうな口を利いていた相手が格闘家だと知って、男性客はにわかに緊張したようだった。
出来の悪いロボットみたいな歩き方でベッドまで歩く姿に、思わず僕は吹き出しそうになった。

『師匠の施術でほぐれていたはずの身体がガチガチやないか。隣の道場で、いっちょ揉んでもらった方がええんちゃうか』

というツッコミは、もちろん飲み込んだ。

やがて施術が終わり、男性客は店から出て行った。
僕はちょっとした報告を済ませてから、男性客について師匠に水を向けた。

「それにしてもさっきのお客さん。ここで聞いてる僕の方がムカついてきました」

「あれくらいで腹を立てるとは、シマちゃんもまだまだやな」

師匠が破顔された。施術台に押し倒されてもいいかなと思うほどの柔和な笑顔で、ゆでだことにはほど遠かった。

かように懐の深い師匠の整体院『癒~time』(ユータイム)は京都の山科にある。
身体がほぐれると、気持ちもほぐれますよ~。リフレッシュされたい方は是非!
 
ちなみに格闘技における師匠のスタイルは『打たさずに、打たない』だ。
やはり奥深い……かぁ?                                          合掌。
 




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コメント

そんなときは
隣のテーブルの
関係ないお客さん指差して、
『『はい、そうですね。』って
あの人が言うてますよ。』
といえばいいんですよ。
その後の事は責任持ちませんけど。

  • 2015/01/12(月) 12:52:26 |
  • URL |
  • タカユキ #-
  • [ 編集 ]

ありがとうございます(笑)

ものすごく、自虐的な気持ちであった場合に試してみます。

結果は見えているような気がするんですが(笑)

  • 2015/01/12(月) 21:05:00 |
  • URL |
  • 島中 之裕 #-
  • [ 編集 ]

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