半泣きの詩(うた)R 

「半」のつく言葉が好きだ。半泣き、半笑い、半ケツ、半身、半熟、半殺し等々。 どれもこれも中途半端な状態を表していてコミカルだ。 半殺しなんかはちょっと物騒な響きだが、それでもきっちり殺されるよりはマシである。 世界は中途半端であふれ返っている。 このブログでは大泣きするほどのことではない、でも半泣きくらいにはなってしまいそうな日常のシーンを掠めとって、読んでくれる人を半笑いにしたいと思います。

音痴の哀切

 
 二十歳からの15年間、ビジネスホテルでフロントマンをしていた。

 ある夜勤のときのこと。

 チェックインがほぼ終わった深夜の1時頃、僕と学生バイトの野中は、事務所で日報の作成や翌日の予約のアサイン(部屋割)などの仕事をしていた。

 そのときどういうわけか、僕は鼻歌を 歌ってしまった。

 音痴を自認する僕は、人前では極力歌わないようにしているのだ。
(でも、歌は好きなので車の運転中にひとり絶唱したりはする。そんなときに道行く人と目が合ったり
すると、恥ずかしさのあまり自爆事故を起こしてしまいそうになる) 

 どういう心持がそうさせたのか自分でもわからないが、とにかくその夜、僕は鼻歌を歌った。

 曲は大好きなスピッツの「チェリー」だった。

♪ 愛してるの響きだけで~♪

 というサビから口ずさんだ。するとそれを聴いた野中が

「いいですねえ。ゴスペラーズ」

と言ってにこりと笑った。僕をおちょくっているようには見えなかった。

「いや、スピッツ。スピッツの『チェリー』や」

 僕が間違いを指摘すると、野中は「うそでしょ」と爆笑した。
 
 僕も調子を合わせてへらへら笑ったが、本当はちょっと泣きそうだった。






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全力疾走のあほ。

 小学校2年生のとき、大西忠志という同級生がいて、こいつが少し変わっていた。

 ある夏の日、グラウンドの隅で僕と大西君はなにをするでもなく、ぼーっとしていた。
 
 とても暑い日でただ座っているだけでも、おでこや鼻の頭に汗が浮かんできた。

 と、突然、大西君が立ち上がり走り出した。30メートルくらい全力で走っては戻ってき、また向こうに走っては戻ってきた。

「なにしてるん?」と僕は訊いた。

「暑いから走ったんや。走ると空気の抵抗で風が吹いてるみたいになるやろ。そしたら涼しいはずや」

 得意げに答えた大西君は汗だくだった。

 僕は「こいつはあほやな」と思った。

 いま、大西君がどこでなにをしているかは知らない。でもきっとどこかを全力で走っているに違いない。

 




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13日の金曜日午前0時ちょうどに鏡をのぞくと、とんでもないことが起きるという聞いて試してみた結果……


 13日の金曜日午前0時ちょうどに鏡をのぞくと、とんでもないことが起きるという話を聞いて試してみた。
 17歳の冬だった。

 早めに風呂に入り、小汚い自分の部屋で僕は時が過ぎるのをじっと待った。
 ヤンキーの弟は出かけていて家にはいなかった。おかんは居間でテレビを観ていたが、23時頃にはもう寝たようだった。おかんは新聞配達の仕事をしていた。親父はもうずっと前からいなかった。両親は僕が8歳のときに離婚していた。

 23時50分頃、卓上鏡とデジタル時計を机の真ん中に置いた。

 僕は幽霊とかオカルトの類は「そういうことがあれば、その方が夢があるかな」というスタンスで、基本的には信じていない。 それでもあと数分というときには、人知を超えた恐ろしい出来事を想像してしまい心臓が縮んでしまった。

 23時59分55秒。生唾をひとつ飲み込んだ。

 23時59分59秒。鏡をのぞきこんだ。

 0時00分――――――。

 なにも起こらなかった。鏡の中にはいつもの不細工な自分の顔があるばかりだった。

 正直、胸をなで下ろした。
 
 そして鏡と時計をいつもの位置に戻そうと思ったときだ。気がついた。

 今回の試みを思いついたのが13日の金曜日の夕方で、実行したのがその日の深夜。つまり僕は14日の土曜日午前0時に鏡をのぞいていたのだ。あほ過ぎる。

 なんとも間の抜けたオチだったが、その後試してみようとは思わなかった。別に恐いわけではないんですけどね。いや、ほんとに。

  


 
 
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めちゃくちゃ広い家


 もう十年以上前の話だ。友達のマサトが結婚した。

「おめでとうさん。ところで新居はどこなん?」

「実家の近く。借家やけど一戸建てや」

「そうか。ええなあ、一戸建てか」

「おう。9LDKや」

「うそっ!? 9LDKってお前、それめちゃくちゃ広いやなか。ほんまか?!」

「ほんまや。9LDKや」

 結婚式の二日前に電話をしたら、こんな会話になった。

「実家の近くってどの辺や?」

「蓮本町や。ミツオの家の近くや」

「蓮本町にそんなでかい家あるわけないやないか。うそつくな」

「うそ違うわ。そんなこと言うなら見に来いや」

 ということになったので翌日見に行った。するとなんのことはないマサトの新居は3LDKのちょっと広いめの家だった。

「お前、9LDKってどういうことか知ってる?」
 
 僕は聖母マリアのような優しい口調でマサトに訊いた。マリアと話したことはないが。

「9畳のリビングとダイニングキッチンやんけ」

 マサトが誇らしげに答えた。

 僕はブッダのような慈悲深い口調でほんとのところを説明してやった。ブッダと会ったことはないが。
 
 するとマサトは三秒くらい黙りこくった後、

「お前、このことは絶対だれにも言うなよ」

 と必死に訴えた。

 僕はガンジーのような情深い笑顔で何度もうなずいた。
 もちろんガンジーにも会ったことはないが、その笑顔はすぐに思い浮かべることができる。

 果たして次の日。披露宴で僕は友達はおろか知らない人にまでこのことを吹聴したのだった。

 





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なぞの電話。


 二十歳から15年間、ビジネスホテルのフロントマンをしていた。

 ある夜勤のときこと。外線電話が鳴ったので素早く出たら

「へっくしょん!」

 とだけ言って切れた。

 




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「あんた○○に似てるな」


 昨日、会社の先輩、夏山さん(仮名・60歳くらい・女性)に

「あんた、チェッカーズに似てるなあ」

と言われた。

 チェッカーズって……古いし7人いたし、いったいメンバーの誰に似てるの? と思ったけど面倒くさいので

「ありがとう。夏山さんは大原麗子に似てるで」

 と返しておいた。

 夏山さんは「いやーん」と頬を赤らめた。ちょっと可愛いなと思った。

 





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18歳未満お断りについて


「この〝18歳未満お断り〟って、おかしいよな。18歳以上のやつらは風俗にも行けるんやから18満のおれらにこそ、こういうものが必要なんや」

 部活の帰りにいつも立ち寄る駄菓子屋『はやみつ』で、友人の細井は誰にいうでもなくそうつぶやいた。
 うまい棒をほお張りながらエロ本を読む細井の顔は、練習中や授業中でさえ見たことがないほど真剣だった。それほど社会とか体制に怒りを感じていたのかもしれない。(ちょっと大げさか)

「そうかも知れんな」

 僕はペプシコーラを飲みながらうなずいた。細井になにかを教えられたということはほとんどなかったが、このときは「一理ある」と思わず膝を打った。

 それから12年後のある夜。29歳にならんとしていた僕は近所のレンタルビデオ屋で会員証の更新をしていた。
 事務処理が終わるのを待っている僕の横に、どう見ても15、6歳の少年が2本のビデオを持ってきた。
 (まだVHSが全盛のころのお話です)

 ボンッと勢いよくカウンターにビデオを置く少年に、僕の更新をしているのとは違う銀ぶちメガネの店員が対応した。

「失礼ですが、おいくつですか?」

 居丈高な銀ぶち眼鏡の質問にややたじろいだ感じの少年は、ふた呼吸ほど置いてから答えた。

「じゅ~、15歳」

「こちらは18歳未満の人はダメなんですが」

 店員が銀ぶち眼鏡を光らせながら少年に顔を寄せた。少年が持って来たビデオのうち1本はアダルトビデオだった。

「……それは、いらん」

 バツが悪そうに少年が言った。
 思わず「おっちゃんが借りてやろうか」と言いそうになった。
 観る気もないのに“一応”借りたのであろう洋画を片手に少年は店を後にした。

 僕はあのときの細井の言葉を思い出した。少年も今、同じような思いでやり場のない怒りと性欲を持て余しているに違いなかった。
 少年よ。頑張れ。今度はつけひげかなんかをつけて借りに来い。そしてエロビデオを観て全身震わせながらオナニーしろ!それが青春だなどと胸中で密かにエールを送った。

 そしてまた時が経ち、いまやインターネットで簡単にエロ動画観られるようになった。
 エロで脳みそがピンク色の悶々少年とってはありがたい時代になったものだ。

 ところでアダルトサイトにアクセスした際、

「あなたは18歳未満? 「YES」or「NO」 YESの方は退場してください」  

 というようなメッセージが出るが、あれで素直に退場する18歳未満はいるのだろうか。 






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僕は「カレーの子」


「お前はカレーの子や」

おかんが唐突に言い放った。
10年ほど前のある夜だ。一人暮らしをするおかんのアパートに僕と嫁が行ったときのことである。

僕と嫁はしばし呆気にとられた。

「なんやねん、いきなり。どういう意味や!?」

生気を取り戻した僕はおかんに問うた。すると、おかんは以下のように答えた。

「お前を身ごもってからというもの、食べるもんに偏りが出てきてな。カレーしか受けつけんようになったんや。10ヶ月間、
朝、昼、晩、毎食カレー食うてたんや。だからお前はカレーの子なんや」

僕の出生に関わる重大な秘密を打ち明けたかのような、神妙な顔のおかんに、深くうなずく僕と嫁であった。

そうか。僕は「カレーの子」だったのか。

ちなみに僕の弟は「餃子の子」だったらしい。

女体は神秘の塊だ。






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あれもこれも、なぜリンゴなのか。

もうずいぶん前のテレビCMで、「リンゴをかじると、歯ぐきから血がでませんか?」というのがあった。
いかにも健康そうな男性タレントが、リンゴを丸かじりしてにっこり笑っていた。あほか。

歯磨き粉のCMだったと記憶しているが、あれはなぜリンゴだったのだ?梨やみかんじゃだめなのか。
まあ、みかんかじって血が出るようでは、もはや手遅れなのだろうが。

それにしても世の中には、「それは、なぜリンゴなのか」ということが多い。

アダムとイブが食べた禁断の果実もリンゴ。なぜだ。豚キムチではだめなのか。
郷ひろみと樹木希林がデュエットした曲は「林檎殺人事件」だったし、松田聖子の曲にも「ガラスの林檎」というのがあった。

キムタクと松たか子のヒットドラマ「ラブジェネレーション」では、象徴的なアイテムとしてリンゴが使われていた。 

風邪をひいたときには、おかんがリンゴをすりおろしてくれるし、プロレスラーや格闘家が力自慢で割って
みせるのもリンゴだ。

この間、iPhone6の発売で世間を賑わせた会社の名前は「アップル」だ。

このように、いろんなところにリンゴが登場するわけだが、僕が一番わからないのはアレだ。

古い青春もののドラマやアニメなんかで、ちょっとはすっぱなキャラクターが登場するとき、リンゴを
かじりながら木の陰から現われたするシーン。アレだ。アレ、ちょっとかっこいいじゃいか。

恥を忍んで打ち明ける。実は僕、高校のときやってみたことがある。なにをって。
だからリンゴをかじりながらの登場をだ。

友達との待ち合わせ場所に、リンゴをかじりながら現われてやったのだ。
果たして友達はリンゴにはまったく関心を示さなかった。あるいは僕の「痛さ」にあえて触れないという
大人の対応をしてくれたのかも知れない。いずれにしてもリンゴも僕の恥ずべき行為もなかったことに
されたのだ。ちょっと悲しかった。そしてなにより辛かったのは、リンゴを丸々1個食べきるのが、
けっこうしんどかったということだ。

あちこちに登場するだけのことはある。なめたらあかんわ、リンゴ。






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人生には出来事が三つしかない。


「人生には出来事が三つしかない。『生まれる』、『死ぬ』 そして『忘れる』だ」

ずいぶん前に放映されたテレビドラマに出てきた台詞だ。
ドラマのタイトルも出演していた役者の名前も覚えていないが、この台詞だけは
なぜか僕のあまり多くない脳みその皺にはさみ込まれている。

ときどき皺からつまみ出しては、その意味を考えてみるのだけれど、今もってよくわからない。
ただ、人生の出来事が三つだけというのは、いささか淋しい気がする。

そこでロマンチストの僕としては、四つ目に『愛する』も入れたいと思ったりするのだが、
そうすると、どうしても『憎む』も入れなければならないので、やめておいた方がいい。

ところで今回、僕がなにを言いたかったのかというと―――忘れた。






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