半泣きの詩(うた)R 

「半」のつく言葉が好きだ。半泣き、半笑い、半ケツ、半身、半熟、半殺し等々。 どれもこれも中途半端な状態を表していてコミカルだ。 半殺しなんかはちょっと物騒な響きだが、それでもきっちり殺されるよりはマシである。 世界は中途半端であふれ返っている。 このブログでは大泣きするほどのことではない、でも半泣きくらいにはなってしまいそうな日常のシーンを掠めとって、読んでくれる人を半笑いにしたいと思います。

先生の言った「座りなさい!」が…

ある日の夜遅く、唐突に娘が言った。


『あんなパパ。今日、授業中に歩きまわってる男子に、先生が座りなさい!って言うたんやけどな』

『うん』

何の気なしに僕は返事をした。

娘が続けた。


『その「座りなさい!」の発音が「ウルトラソウル!」と同じやってん』


座りなさい!の発音がウルトラソウル!

とな。

笑ってしまった。

娘よ。なぜ、そんなふうに聞こえてしまったのだ。


短く大きく笑ってから、僕は娘に訊いた。


『先生の「座りなさい!」のあとに「へい!」って言ったか?』


『あ。言わへんかった』

娘は微笑み、少し悔しそうに唇を噛んだ。


娘が小3の時の話だ。

中学生になった今の娘なら、きっと「へい!」と言えるに違いない。



ところで、去年の9月22日からはじめたこの『半泣きの詩(うた)R』、今日でちょうど1年ですが、今回を以て終了とさせていただきます。


どうもありがとうございました。

2015年9月22日

島中之裕





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娘が小4のとき、一緒にお風呂に入っていたある夜…

娘が小4だったある夜のことだ。

一緒にお風呂に入っているとき、身体に少し変化が出てきた娘に僕が言った。

『おぉ。ちょっとチチ出てきたなぁ』

すると娘は

『もう、パパ。チチとか言わんといて』

とほっぺたを膨らませた。

そう言われても、チチはチチであるので、

『じゃあ、なんて言えばいいんや?』

と訊くと、娘は数秒間、考えたのち

『“にゅう”って言うて』

と言ってカラカラ笑った。

よもやの答えに僕も笑った。


いまは中学生になった娘とは、もう一緒にお風呂に入っていないが、あまりさびしいとは思わない。子供の成長とはそういうものだ。

それより、一緒にお風呂に入ってくれる彼女の1人もいないことが、さびしいなぁと思う今日この頃である。

どうすれば彼女ができるか、娘と嫁に相談してみるか。





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夏の終り、もしくは秋のはじめの想い出。

僕は先に温泉から上がり、1人部屋に戻った。

窓の外を見るとちょうど太陽が海の向こうに沈もうとしていた。


9月下旬の吉良は、少し肌寒かった。

松久、さっち、みなちょ、そして僕の4人は高校の同級生だ。

それぞれ恋人がいたりいなかったりだったが、年に一度は温泉に行っては、日頃のウサを晴らしていた。


窓際の椅子に座り缶ビールを開けた。

オレンジ色にキラキラ光る海を見ながら、僕は思い出した。そして考えた。あの時のあの人のあのひと言について。

『ごめんなさいね。あなたしかいないって言ったけど、ほんとうは私を幸せにしてくれる人なら誰でもよかったの…』


一体、彼女は僕のことを愛していたのだろうか…。


“涙は人間が作る一番小さな海です”と寺山修司が言った。


目の前に広がる海が人間の涙でできたのだとしたら、どれほどの人が涙を流したのだろう。

僕は海があまり好きではない。いや、正確に言うと怖いのだ。

海は何でも呑み込んでしまう。 あの大きくて熱い太陽でさえも呑み込んでしまうのだ。そんな海に、こんな汚れた僕なんかが身を浸すときっと呑み込まれるに違いない。 そう思うと怖くてたまらないのだ。


一体、僕は彼女のことを愛していたのだろうか。

酔いがまわってきた。脳みそが、とろりとしたバターのようになってきた。あの人のことも、明後日からの仕事のことも、どうでもよくなってきた。


後ろで物音がした。


『あれ。島中くん、もう上がってたの』

さっちが戻ってきた。濡れた黒い髪を無造作に束ねて、うなじに手を当てながらにっこり笑った。

ほんのりと頬が紅く、胸元が汗で少し“光っている。

僕は返事らしい返事をせず、また海を眺めた。

海はやはり美しく、畏(おそろ)しかった。 視界の端にさっちが入ってきた。僕の横に立っているのだろう。
僕たちは何も話さなかった。 ただ、目の前に広がる海と海に呑み込まれていく太陽を見ていた。恋人同士ならきっとキスのひとつでも交わすに違いないようなシチュエーション。友達とはいえ、なかなかの雰囲気だ。


僕は気の利いたセリフのひとつでも言ってやろうと考えた。とろとろバターの脳みそで。
だけど、先に言葉を発したのはさっちだった。

『島中くん、口開いてるよ』

そう言ってさっちは笑った。僕も笑った。

もはや太陽は完全に海に呑み込まれていた。

程なくして、松久とみなちょも戻ってきた。
その後は飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎだった。楽しかった。また行きたい。


―――20年前の日記から。

ずいぶん気持ちの悪いことを書いていたものだ。

でも、20年経った今も、あの人が言ったあのひと言をこの季節になると思い出す。

いかんなぁ。





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体育祭の季節。クラブ対抗リレーで悲しかった剣道部。

体育祭の季節だ。

他のところにもあるように、僕の通っていた高校でもクラブ対抗リレーというのがあった。

もしかしたら他と違うのは、僕の母校では運動系のクラブがそれぞれのユニフォームを着て、それぞれの競技の特徴をアピールしながら走るという点だ。

野球部はバッティングの素振りをしてから走り出す。バレー部は走っている途中で回転レシーブをする。バスケ部はドリブルをするフォームで走るなどなど。

僕が所属していた体操部は、走っている途中で、ロンダートからのバク転を連続でやってみせ、そのままコースから外れたりした。

もはやリレーの体(てい)を成していないとも言えるプログラムだったのだが、かわいそうだったのは剣道部だ。

連中は、面以外の防具を身につけ、バトンの代わりに竹刀を持ってリレーに臨むのだが、

『め~ん! め~ん!』

と奇声を上げては、竹刀を振り振り、あの進んでいるのか後退しているのかよく分からない足運びで走るのだ。

その遅いこと間抜けなこと。ほとんど苦行である。


そんな遊び心を持ち寄ったクラブ対抗リレーで、1位を獲るのは決まって陸上部だった。

何せ走るのがメインのクラブだから、特徴をアピールするとなると、そりゃもう走るしかないのだ。各クラブが観客を楽しませながら走る中、普通に走っていつも1位。

こういうを、ほんとの“出来レース”というのだな。違うか。





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ヒマだったから弟夫婦の新居に、大阪ガスを装ってイタズラ電話をした。

弟夫婦が新婚のときだから、もう20年くらい前の話である。

当時、僕はホテルマンをしていたのだけれど、平日のある休みの日、ヒマ過ぎて死にそうだったので、弟夫婦の新居に電話をした。大阪ガスを装って。そうイタズラ電話をしたのだ。

『お世話になります。大阪ガスと申します。島中さんのお宅でしょうか』

『はい、そうですが』

電話には新妻であるトシコちゃんが出た。弟は仕事に出ているはずなので、予想通りである。

『実はいま、島中さんのお宅の近くでガス管の工事を行なっているんですが…』

『はぁ』

『ちょっと想定外のことが起きまして、ご連絡させていただきました』

『え。どういうことですか!?』

にわかに不安げな声になるトシコちゃん。当然だろう。

『実はガス管からガスが漏れていると報告がありまして、正直、危険な状態でございます』

『えぇ!?大丈夫なんですか!? 』

トシコちゃんの不安レベルが上がる。

『落ち着いてください。火を使ってらっしゃったら全部消してください』

『わかりました。ちょっと待ってください』

トシコちゃんが火を消しに行く音が受話器から聞こえてくる。

笑いそうになるが、こらえる。

『もしもし、火は消しました。大丈夫なんですよね』

『いや。それがですね。非常に危険な状況になってきてしまいました。あぁ!ちょっとヤバいです。 こ、これはまずい!爆発するかもしれません』

『ええ~っ!? どうすればいいんですか!? どうすればいいんですか!?』

ほとんどパニックのトシコちゃん。

『落ち着いてください。いいですか。落ち着いて“シェーのポーズ”をしてください』

『え。なんですか、それ』

『おそ松くんのイヤミがやる“シェー”です』

『知ってますけど、なんなんですか!? どういうことですか!?』

さすがにおかしいと思ったのだろう。トシコちゃんの声にわずかな怒気がこもる。

ここまでだと判断し、正体を明かした。

『トシコちゃん、オレやオレ』

『お義兄さん!? もう! カレー作ってたのにぃ。びっくりしたやんかぁ!あほぉ』

トシコちゃんの怒りは思いのほか激しかった。

大阪ガスを装ったイタズラ電話だっただけに、怒り大爆発といったところか。あまり、うまくないな。

大爆発したトシコちゃんだが、謝るとすぐに許してくれた。


結局、その日は弟夫婦の新居に行ってカレーをごちそうになった。

途中で火を止めたにも拘わらず、とてもおいしかった。





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